幼稚園の外廊下。
みんながガムテープを床に張り付けてははがす。
粘着で埃をとる、お掃除だ。
ベリッとはがすとゴミが取れる。
だんだん粘着が弱くなるから、先生に新しいテープをもらう。
私は意気揚々と、みんながやっていない場所もきれいしようと、
外廊下にぐるりと張り巡らされた手すりの付け根のあたりにテープを張り付けた。
ベリッ 私がテープをはがすのと、先生が悲鳴を上げたのは同時だった。
「ああああボブ太郎ちゃぁん…」
先生が嘆く。
手すりはペンキ塗装で、だいぶ劣化していた。
私がはがしたテープの粘着部分にははげたペンキががっつりついていた。
もちろん先生は私を怒らなかったけど、
自分が良かれと思ってしたことが、良くないことだったのはよくわかった。
間違えちゃった…。しかも、もとに戻せないことをしてしまった。
これが私の一番古い記憶。
自我が生まれたきっかけとしては、ほろ苦い。